まちづくりプロジェクトは一人ひとりの総合力で
寄せられたご意見・ご提言はこのコーナーに掲載します。
三十数年前、串間市の公式ホームページには掲示板が設置してありました。それは当初、まちづくりや行政への要望などが主な内容でした。しかし1992年2月九州電力の原発誘致打診の話題が起き上がってからはほとんどその賛否討論の場所となり、それが数年間続きましたが、そのうち掲示板の内容についての疑念(行政誘導による不公平性)が取り沙汰されるようになったことで、しばらくして閉鎖されました。
打診から20年近く原発誘致に関し諸々の展開が成され、当初は反対が圧倒的に多かったのが、平成へと年号が変わってからのバブル崩壊や人口減少、それに伴う高齢化などからの景気低迷が続いたことが引き金となり、背に腹は代えられない感が広がったことで徐々に誘致賛成派が増加し、それに準ずるが如く原発の立地を問う住民投票が2011年の4月10日に行われる予定でした。
それが、同年3月11日に起こった東日本大震災(3.11)の原発被害により急遽中止され、その後、市民のなかには景気回復への「あきらめ感」が増幅し、不満は発するも行動は人任せにする言動不一致的風潮が蔓延していきました。
行政側から新五ヵ年計画が示されることがあっても誰もそれが実現できるとは思わず、立派な内容ゆえ逆に揶揄される状態でした。そこから「まちづくり」への諸策が為されてもモノづくり以外、極一部を除き確たる成果が出るまでには至りませんでした。
それからちょうど10年目の2021年12月10日、串間市議会がMRTテレビで取り上げられ、その醜態が露わにされました。それは旧態依然の体質のそれより低下した内容のもとだったとしかいえずただ恥ずかしいかぎりでした。
それらの低迷要因はどこにあるのか? ここではあえて、そのことには触れずに、あくまでこれからの事について、近未来を見つめた方策を探っていきたいと思います。
まちづくりは人づくりから
すべての事を為す原点は一人ひとりの個人。ではその有り様とは?
まちづくりに限らず、家庭や学校、職場においても、そのすべてに人が関わることから、どの分野においても「人」の有り様で結果が大きく変わってきます。それでは、まちづくりに関わる「人」にはどのような資質が求められ、そしてどのようなタイプが必要かについて考察してみたいと思います。

NHKの大河ドラマ「西郷どん」のなかに登場する村田新八という人物のことを、智・仁・勇の三徳すべてが備わった者として、西郷隆盛が高く評価している。ドラマの内容はともかく、それでは、智・仁・勇の意味とは何かについて考察してみましょう。
論語のなかで、智の人は惑わず、仁の人は憂えず、勇の人は恐れないとあり、孔子は、智・仁・勇を大いなる徳としている。そして、智仁勇の三者は天下の達徳なり」と述べ、「三達徳」(万人が修めるべき3つの徳)としている。
これを具体的に言うとすれば、何が正しいかを識る意の「智」、相手を理解する、相手の立場になってものが考えられる慈愛の心を「仁」、そして勇気をふるって打ち込む「勇」。この智・仁・勇は剣道の極意として示されることがある。
これは要約すると「智恵ある者は迷わない、仁義ある者は憂えない、勇気ある者は恐れない」というような意味合いになりますが、トップに必要な3条件のように感じます。
トップには「智恵」も「仁義」も「勇気」も必要です。幅広い視野で物事を見るための経験や知識、他人への思いやりに基づく行動、恐れず突き進み時には引く勇気…どれも大切な事です。
「智恵」と「勇気」は持っている人も多いと思います。でも「仁義」は「恕」の心になりますから、意識している人は居ても本質を理解していたり、継続して実行できている人は少ないと思います。しかし、この「仁」を感じることができないリーダーの場合、勢いのある最初は多くの者が集ったとしても、そのうちの大多数は自然と離れていってしまいます。
人をまとめて共に行動する場合、自ら損をしても相手に得を与えることや自らが一歩引いて相手を評価するなどの気持ちがなければ、ある一定の規模のことは出来たとしても、それ以上の発展は望めないことになります。
よく、共に会社を立ち上げ、ある一定の成功を収めたのに途中で絶縁状態になってしまう例を聞きますが、これが上司にあたる者の「仁」の欠如からくる結果だといえるでしょう。
会社が軌道に乗るまでは、創立相手に頼りきって諸難題をもちかけ問題を解決してもらっていたが、形が整ったのち周りから人材が集まりだすと、創立相手の恩義を忘れたかの如く疎遠的対応になってしまうケースです。
無私を忘れて仲間を無視することの愚行には独立意向のある者のうち、独善意識の強い者が陥りやすい傾向にあるといえるでしょう。そして上司に限らず自ら責任をとることなく、更にそれを部下や他人のせいにしてしまうような者もまた、それを恥ずべき行為として、その行為は成長を阻害する重大な社会罪になるとの認識をもってほしいと思います。
「迷わず」「悩まず」「畏れず」…リーダーに限らず、周りの人たちにも、常にこの意味を自覚していただき、まちづくりなどの活動に臨む際には常に意識しながら大意をもって行動して欲しいと願います。
また、良く言われることに「わかもん・よそもん・ばかもん」という言葉があります。これはまちおこしに必要な人材のタイプを表しています。
わかもん・・若い人はエネルギーがあります。人目を気にせず、大きな声が出たり、熱く盛り上がることができます。経験が浅い分、失敗の経験も少ないので、思い切ったアイディアを実行できます。
よそもん・・そのまちとは別のまちの出身なので、そのまちを客観的に見ることができます。そのまちのいいところ、悪いところを把握するのにあまり時間がかかりません。また他の町での成功した事例を体験している可能性が高く、企画、実施の段階すべてでよい意見を持つことが可能です。その町出身でも、学校や就職などで他のまちに住んでいた人も広義の意味でここに入ることもあります。
そして最後にばかもん・・既成概念にとらわれません。仕事や商売関係なしにまちづくりに熱い情熱をもって、それを行動や意見をもって、多くの人に伝え一緒に行動しようとします。時には仕事や家族をほっぽりだしてまちづくりに没頭します。この中には根っからの「おまつり」やといわれるタイプもいます。三つのタイプのなかでも実はこの「ばかもん」が最も重要ですが、ただ突っ走る傾向があるのでこの部分を上手くコントロールできる者が身近にいることが必要です。
次回は、コミュニケーションづくりに必要なキーワードについて述べます。